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はじめに |
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ケアマネジャーは業務において「記録」を作らなければ仕事にならない。かなりたくさんの量と種類の記録を作成する必要がある。
しかし「記録」は「書いてあればいい」というものではない。沢山書いてありすぎて読むことすら面倒くさくなるような記録は、記録としての意味をなさない。
また、記録そのものをどう書けばよいのか、何を書けばよいのかを理解して記録しているかというと必ずしもそうとも言い切れない。そのためせっかく苦労をして時間をかけて記載した記録が、場合によっては「記録なし」となって「書いた意味がない」という事態も少なからず起きている。
そこで「ケアマネジャーと記録」として、ケアマネジャーが作成しなければいけない「記録」には何があり、それをどのように書いていけばよいのかについて考えていきたいと思う。 |
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1.「記録」とは何か。 |
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記録には様々な定義があるが、代表的なものをいくつか挙げてみる。 |
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1
将来のために物事を書きしるしておくこと。また、その書いたもの。「―に残す」「実験の―」「議事を―する」 |
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2
競技などで、数値として表された成績や結果。また、その最高数値。レコード。「―を更新する」 |
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3
歴史学・古文書学で、史料としての日記や書類。 |
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このうち本論での定義として用いるのは「1」である。 |
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この定義の中からわかるように、記録は「将来のために」「物事を書き記しておく」ことである。これは、「将来使う」事を前提にしているということだ。つまり「将来」において、過去の「そのとき」に何があったのかを「再現」できるように物事の状況や内容、経過、結論を書き残しておくということ。結果的には「事実とその経過」の「遅延再生」を可能にするということだ。 |
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また記録には「過去に何をしたのか」という「証拠」としての意味合いも持つ。過去に何を考え、何を行ったのか、その結果がどうなったのかを書き残すことで、将来その事実と経過を検証し、確認をするための「材料」となるとともに、過去に何をしたのかを客観的に証明するための材料となるのだ。 |
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このように記録は、単に書かれていれば良いというものではなく、将来その記録を活用すること、活用するために書くということを前提にして、作成されていく必要がある。つまり単に「事実」の羅列だけではなく、プロセスがわかるように記載されていくとともに、その中には判断の根拠や思考の変遷がわかるように記載されていく必要がある。しかもそれは事細かに逐一記録されるのではなく、できるだけ簡略にしつつも事実関係や物事の推移が間違わないように記載していく必要がある。 |
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2.記録を書くための条件 |
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記録はただ単に「書け」といわれて書けるものではない。記録を書くために絶対的に必要な条件が二つある。これを理解し実践した結果として始めて記録を書くことができる。 |
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1)条件1:「様式」の求めていることを理解する。 |
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「利用者氏名」と記載されている箇所に利用者の氏名以外の情報は書かない。これは至極当たり前のことだ。ではなぜ利用者の氏名以外の情報を書いてはいけないのか?それはそのスペースには「利用者の氏名を書け、それ以外は書くな」というルールがあるからだ。すなわち記録様式があれば、その様式には「記載のルール」が存在している。そのルールを理解した上でないと書けない、あるいは書いたとしてもそれが意味のあるものにはならないということだ。 |
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この条件は至極当たり前のものに思えるが、実はそんなに簡単ではない。例えば居宅サービス計画書(1)の「利用者及び家族の生活に対する意向」の欄には何を書けばよいかすぐに説明ができるだろうか?そしてその説明はルールが求めているものと一致しているだろうか? |
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記録を書くためにはあらゆる記録様式の、それぞれの記載ルールを的確に把握していることが求められている。それは場合によっては国が定めたルールである場合もあるし、事業所の中で取り決められているルールもある。時には自分自身がルールを設定している場合もある。それぞれの「ルール」に従った記載が出来て始めて「記録」としての意義と価値を作り出すことができることになる。 |
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2)条件2:「情報」を得る。 |
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記録を書くためには記載スペースの条件に沿って、必要な情報を保有していないと書くことができない。「利用者氏名」を書こうと思ったときに氏名を知らなければかけない。逆に言えば氏名を知っているからこそ氏名欄に利用者の氏名を書くことができるということだ。 |
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前述の「利用者及び家族の生活に対する意向」を例に出してみる。この欄に情報を記載するためには、利用者と家族の、各々の「生活に対する意向」を記載者が情報を持っていなければかけない。そして情報を得るためのコミュニケーションを図った結果で情報を得ることができる。つまり記録を書くためにはそのスペースの求めているルールに沿った情報を得るための活動をしておかなければかけないということになる。 |
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例に沿って考えてみる。「生活に対する意向」とは何かをまず理解していなければいけない。これは「どのような暮らしをしていきたいと思っているのか」ということであり、疾病や障害などの課題を抱えてはいるものの、利用者や家族が将来的にはどのような暮らしをしていきたいのかという「生活を営む上での目標となる暮らし方」を把握するということだ。そしてこれらは利用者や家族から明確な言語として表明されるとは限らないので、記録作成者(ケアマネジャー)は観察や洞察とコミュニケーション技術を用いて、利用者や家族と協議をした結果とりまとめをし、それに対する合意を得て「共有」し「共通認識」して始めて「情報」を獲得することができ、その結果としてこの欄に「意向」を記載することが出来るのだ。 |
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このように記録を書くためには「様式の求めているルールを理解する」ことと、「その情報を得る」ということの二つの条件を充たさないと「かけない」ということになる。 |
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3)誤解を正す。 |
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「記録が書けない」という人にその理由を確認すると前述の2つの絶対条件はまず出てこない。出てくるのは「何をどう表現したらよいのかわからない」という言葉であったり、中には「字が下手くそだから書けない」という言葉だ。しかし実際にはルールを理解していなかったり、そもそも情報がないことが本当の理由なのだがそこには気がついていないことが多い。 |
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このように言われた場合にどうするのかを考えてみる。 |
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方法1:ルールの確認 |
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単純に「この欄には何を書く必要があるのか」を確認する。 |
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これによってルールの理解状況を把握するとともに、何をすべきかを明らかにする事ができる。 |
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方法2:情報の確認 |
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スペースに書くべき情報の有無を確認する。 |
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これによって情報の有無の確認と、何を書くべきなのかを伝えることができる。 |
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また、情報がない場合や不足している場合等には、何をすべきなのかを明らかにする事ができる。 |
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これらの活動を通じて「記録が書けない本当の理由」を明確にし、かつ同時にそれは求められている活動を行わないと「書けない」ということを明らかにしていくことが必要になる。 |
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4)表現方法を理解する |
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記録を作成する際に必ず言われることが「どう表現したら良いのかわからない」ということ。 |
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これは情報を持っていても言われる場合がある。 |
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この場合にはまずすべきことは「読み手を意識した表現」とするということだ。 |
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記録の定義でも触れたように、記録は将来「誰か」が読むことを前提にしている。そのときの読み手が記録をすんなりと読んで理解できるように書くことに意識を向けるとが必要となる。具体的にはだらだらと書き進めていくよりも箇条書きのほうが読みやすい場合にはそうしたほうがベターだ。あるいは誰が何をいった・したのかの区分けを明確にするために逐語録的なまとめが必要となる場合もある。また主観と客観、事実と推測の区別をつけるというということも必要となる。これを理解し使い分けるだけで記録は読みやすくなり、書きやすくなる。 |
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また、記録は書き慣れないと書けないものだ。慣れるためには数を書かなければいけない。また、記録の表現方法の上達のためには他者が書いた「記録を読む」ことが最善の学習方法だ。よくまとまっている記録を読み、それを真似してみることで表現方法は向上していく。 |
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3.記録の書き方 |
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1)居宅サービス計画の記載方法 |
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居宅サービス計画書の詳細について、簡単に説明すると次の通りになる。 |
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居宅サービス計画書(1):フェースシート情報と支援全体の方向性を明確にする。 |
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@:生活に対する意向の把握、その実現に向けた支援の方針を記載する。 |
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居宅サービス計画書(2):具体的な支援の方法(課題・目標・支援内容)を明確にする。 |
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@:アセスメント結果に基づき、生活の意向の実現に向けた「解決すべき生活課題」を記載する。 |
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A:課題を解決するためのSTEPを明らかにし、それを長期・短期の目標として設定し、その状態像
と達成期間を設定する。 |
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B:短期目標の達成のために必要な支援を、チームケアの視点に基づいて具体的に記載する。 |
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C:サービスの提供者・提供期間・頻度を記載する。 |
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D:保険給付対象外のサービス(利用者の役割、家族の役割、インフォーマル支援等)も記載する。 |
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週間サービス計画表:週間のサービス計画及び週間以外のサービスのスケジュールを明確にする。 |
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@:1週間の基本的なスケジュールを記載する。 |
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A:1週間の単位では記載できない支援(不定期、月に数回、スポット、月を単位として提供される
支援など)を記載する。 |
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B:利用者の日課の状況を記載する。 |
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サービス担当者会議の要点:サービス担当者会議の会議記録。何について会議し、まとまったのかを記録する。 |
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@:会議の開催日・時間・出席者を記載する。 |
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A:会議の議題を記載する。 |
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B:討議された内容を記載する。 |
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C:会議でまとまった結論を記載する。 |
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D:残された課題、結論が出なかった議題、今後の開催予定などを記載する。 |
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サービス担当者に対する紹介(依頼)内容:担当者会議に参加できない担当者に対して、会議で必要とする情報などの照会とその回答を記載する。 |
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@:欠席者が欠席した理由を記載する。 |
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A:欠席者に対して、担当者会議の中で他の参加者に伝えて欲しい内容を照会する。 |
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B:欠席者に対して、担当者会議の議題に対する意見を照会する。 |
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C:A・Bの照会に対する回答を記載する。 |
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居宅支援経過:事業所や利用者との連絡調整など、業務を実施した過程を記録する。 |
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@:いつ・誰と・何を調整したのかなどの、ケアマネジメントの展開過程を記録する。 |
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A:モニタリングをして得られた情報を記載する。 |
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B:モニタリングのまとめの記録を記載することができる。 |
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サービス利用表:利用者に対する月間の支援のスケジュール表。 |
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@:2表・週間計画表を基にして1月のサービス提供スケジュールを記載する。 |
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A:いつ・誰が・何を・どれくらい提供するのかを明確にする。 |
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サービス利用表別表:利用者に対する1月のサービスのコストと負担額を明確にする。 |
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@:利用表のスケジュールに基づいて支援を提供した時の総費用・利用者負担分・保険給付分を
明確にする。 |
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A:保険給付対象外の費用(通所系サービスなどの食費等)も記載する。 |
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サービス提供表:事業所に対して、月間のサービス提供スケジュールを明確にする。 |
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サービス提供用別表:事業所に対する1月のコストを明確にする。 |
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居宅サービス計画(1)〜(8)の作成方法については「法令順守!居宅サービス計画書作成と手続きのルール(日総研出版 2008年2月25日発行 第1版第1刷 http://www.nissoken.com/book/1337/index.html)」が一番わかりやすく、かつ詳細なルールと記載内容を明確にしてあるので、ぜひこの本を手に入れて参考にして欲しい。 |
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2)厚労省の定めた様式以外の作成が必要な記録の記載方法 |
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2)−1 モニタリングのまとめの記録 |
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(1) モニタリングのまとめ記録の方法 |
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モニタリング記録には二つの作成方法がある。 |
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その1:支援経過記録に記載する方法 |
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その2:「モニタリングのまとめの記録様式」を別途使用する方法 |
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方法は二つに区分けされるが、作成に関するルールは共通している。 |
方法は二通りあるが、ルールは共通している。 |
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(2) モニタリングの記録に関するルール |
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ルール1(モニタリングに関する運営基準) |
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「最低でも月に1回自宅を訪問し、利用者・家族と面接をして、居宅サービス計画の実施状況の把握を行った結果の記録を月に1回記録する。」 |
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ルールから読み取る「記録すべき内容」 |
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@:居宅サービス計画の実施状況の把握 |
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●利用回数に対する視点(実績確認) |
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●サービス内容に対する視点(居宅サービス計画に従った支援内容になっているか、利用者・
家族の満足度) |
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●支援の効果に対する視点(目標の達成状況、利用者・家族の満足度) |
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A:介護支援専門員の判断を記録する。 |
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●事業所からの情報だけでは不足(不十分)である。 |
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●介護支援専門員の主観だけでは不足(不十分)である。 |
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●事業所・利用者・家族から情報を集め、それを活用して面接をした結果を記録する。 |
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ルール2(モニタリングの視点)=記録すべき内容 |
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@:課題・目標の妥当性の確認=アセスメント状況の変化の有無 |
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A:利用者・家族の状況の変化の確認=アセスメント状況の変化の有無 |
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B:利用者・家族の、サービスを利用した結果に対する満足度 |
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C:目標の到達度、変化の確認 |
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D:サービスの実績(予定と実績の差、及びその理由) |
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E:より良いサービスの提供に資する情報の有無の確認 |
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F:新たなニーズの出現の有無の確認 |
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(3) モニタリングの記録の記載方法 |
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@:「モニタリング」を実施した「事実」だけを記載するのではない。 |
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●前述の「モニタリングの視点」に基づいて、情報を集めた結果を記録する。 |
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●「著変なし」という記述ではなく、何が変化していないのかを記録する。 |
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●誰から得た情報か、誰が判断した情報かを区分けして記載する。 |
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A:モニタリングの結果の記録であることを明確にする。 |
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●特に支援経過記録の中に「モニタリングの記録」を記載する場合、支援経過との区別をつける
ことが必要になる。 |
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・「見出し」をつける、タイトルをつけるなどの方法で、区別をつけることが必要。 |
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B:日付は不可欠 |
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●「月に1回」の記録作成義務があるため、証拠としての日付が重要な意味を持つ。 |
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C:モニタリングの記録を別途作成する場合の留意事項 |
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●モニタリングのまとめの記録であることを明確にする。 |
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●特に支援ソフトのモニタリング記録の機能を活用する場合、以下の点に留意が必要 |
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・ソフトの機能に「モニタリングのまとめの記録」として必要な要素が含まれているかを確認する。 |
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・全ての要素が含まれていない場合、1つの要素の中で代用や兼用ができるかを確認する。 |
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・必要な情報を記載できないような場合には使用困難と考えるべき。 |
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⇒最悪の場合「モニタリングの記録」と認められなくなる可能性が否定できないため。 |
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2)−2 評価表 |
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(1) 評価とは何か |
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評価とは「結果を把握すること=目標の到達度の把握」ではない。 |
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評価とは次のステップを経ることによって実施することとなる。 |
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STEP1:結果(目標の到達度、利用者・家族のサービスを受けた満足度)を把握する。 |
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STEP2:結果が当初予測されていた通りのものかを確認する。 |
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STEP3-1:当初予測されたとおりであれば次の目標設定を行う。もしくは支援が終結する。 |
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STEP3-2:当初予測されていた状況に到達していなければ、到達しなかった原因を解明する。 |
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STEP4:原因の解消策を検討する。 |
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STEP5:原因の解消策を取り入れた新たな支援を展開する。したがって原因及びその解消策によ
ってはアセスメントまで遡って修正をしていく必要が生まれてくる。 |
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評価は支援が利用者の目標充足のために適切に展開されているのかを検証し、修正が必要であれば修正を加えていく行為を意味している。したがって結果を把握するだけではなく結果が予測どおりになっていない場合には必要な修正を加えていくことになる。この修正を行うための情報や根拠がモニタリングによって得られてくるものとなる。 |
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(2) 評価表の様式 |
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現在の運営基準においては「評価表」に関する指定様式や標準様式は設けられてはいない。したがって様式については自由裁量に任されている。しかし評価とは何をする事なのかということから、様式に含まれる情報は次のようにまとめられる。 |
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@:既存の目標及び目標の達成のための期間が明記される。 |
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A:目標の到達度が明確に記載される。 |
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B:目標到達度に応じてどのように対応するのかがわかるようになっている。 |
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C:目標が達成されていない場合にはその原因分析が行われ、その結果が明記される。 |
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D:原因の具体的な解消策が記載できる。 |
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E:解消策を、どこに・どのように活用するのかがわかるようになっている。 |
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以上の情報が含まれている既存の様式としては「予防ケアマネジメント評価表」がある。この様式はあくまで予防ケアマネジメントを展開するための様式であり、そのままの形で介護給付のケアマネジメントに用いていくことは困難があるが、様式の求めている記載のルールや考え方は評価を行う上で極めて重要なものとなっている。 |
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